加藤千恵「点をつなぐ」
主人公のみのりは北海道出身の28歳。
東京のコンビニチェーンでスイーツの商品開発を担当している。
地元の友達が結婚・出産したりしている中で、
仕事一筋のみのりは周りと比べて内心焦ったり、
これからの人生について考えを巡らせたりと
葛藤ばかり。新商品の開発にも頭を痛めている。

恋愛に関しては、社会人1年目の頃の苦い失恋が心残りで、
長年恋人はいない。
そんな中、高校時代の同級生の立川や、
取引先のメーカー開発者の藍田さんといった、
2人の男性との関係も気になるところ。

作者の加藤千恵の小説は本当に読みやすいので、
これまで何冊も買って読んでいます。
彼女は私と同じ北海道出身で、この作品の主人公も北海道出身。
北海道の描写に関してや、周りと比べて焦る点については、
わかるわかる、と共感しながら読みました。
そしてコンビニスイーツの商品開発の苦悩や裏側も知ることができて、
読み応えがありました。
あと、ページ数が200ページ未満なのも読みやすかった。
巻末には作家の村田沙耶香との対談が掲載されています。

作品の主人公のみのりは、人に素直に甘えられず、
不器用な女性なんだと思います。
仕事以外では積極的ではなく、自分がどうしたいのか、
例えば男性とどう付き合っていきたいのかが、意思が見えてこない。
人任せだったり、流れに任せているところがある。
そして後悔してるの繰り返し。

この作品でもポイントになっていて、個人的にもひどいなあと感じたのは、
みのりが新卒1年目でコンビニ店舗の店長業務を任され、
激務で心身共に余裕がなく、大学時代から付き合っていた彼氏と
別れ話をするシーン。
この時のみのりの心境を要約すると、
”別れ話よりも、部屋に帰って眠りたかった。それほど疲れていた”って。
仕事でいっぱいいっぱいで疲れてるのはわかるけど、
彼氏に対しての態度が冷たいしひどすぎる(-_-;)

約束をキャンセルしたり連絡しなかったのもみのりなわけで、
それが積み重なって彼氏も別れを考えたのだ。
彼氏からすれば、”別れを先延ばしにしていたのはどっちやねん”っていう。
会いに行ったら会いに行ったで、言い訳なしに彼氏とちゃんと向き合って、
誠実な態度をとってほしいって思った。
彼氏はただみのりを責めたいわけでなく、みのりの労働環境のことや、
みのりの体調に関して心配して話したりしているのに。
それに対して全部言い返しては、
「(自分の)知らない仕事に口出すのもどうかと思うけど」
と吐き捨てるみのり。
もう彼氏に同情してまうわ!!ヾ(≧□≦*)ノ

彼氏も新卒で社会人として働いていて、
それでもみのりと会おうとしてたりしてたわけで。
きっとちゃんとみのりと話がしたかったんだよね。
「別れるなら別れるということで構わない」のは、彼氏の方だったのだ。

私が働いていた頃、休みの日も仕事のことや職場のことが頭から離れなかった。
みのりは切り替えが下手だったんだろうな。昔も今も変わらず。

”自分で選びとってきた道”というのがこの作品のテーマなんでしょうけど、
仕事以外での生き方や恋愛に関しては、ちゃんと自分の意思を示して
点つなぎしていってほしいなと思いました。
もし続編が出たら読んでみたいな。

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